「通勤用のリュック、そろそろ買い替えたい」——そう思って探し始めると、まず目に入るのが容量(リットル)です。20L、26L、30L……。数字が大きいほどたくさん入る。それは間違いではありません。
ただ、毎日使う道具として見ると、容量だけで選ぶと必ずどこかで困ります。私は鞄の製造の現場に20年いて、いまは裁断と縫製の両方を担当しています。その目で選んで、実際に毎日背負っているのが Thule(スーリー)の20Lと26Lです。
この記事では、通勤リュックを選ぶときに本当に見るべきところと、私が2つのサイズをどう使い分けているかを、できるだけ正直にお話しします。
毎日13点を持ち歩く、私の通勤
まず、私が毎日リュックに入れているものを並べてみます。
- スマートフォン
- ノートパソコン
- ペン
- 各種キー(鍵)
- 定期券
- サングラス
- 仕事用メガネ
- 作業着
- タオル
- 昼食(弁当)
- 財布
- 手帳
- ウェットティッシュ
- 500mlのペットボトル
数えると13〜14点。特別に多いわけではなく、働いている方なら似たような構成の人は多いはずです。問題は「入るかどうか」ではなく、「取り出しやすいかどうか」でした。
容量が足りていても、全部を一つの空間に放り込むタイプのリュックだと、朝の改札前で定期券を探し、昼に弁当を取り出すたびに他のものが崩れる。この小さなストレスが、毎日となるとかなり効いてきます。
通勤リュック選びで見るべき3つのこと
① 容量よりも「ポケットの配置」
大事なのは総容量よりも、持ち物それぞれに「定位置」を作れるかです。ポケットの数だけでなく、その大きさと位置が持ち物に合っているか。ここが合っていると、荷物を探す時間がほぼゼロになります。
② 満載でも、手がすっと入るか
見落とされがちですが、これが毎日の快適さを決めます。荷物を入れきった状態でも、内部にある程度の空間が保たれる形かどうか。パンパンに膨らんで口が閉じるような作りだと、出し入れのたびに手をねじ込むことになります。
③ 【職人の視点】素材・製法・ファスナー
鞄の現場にいると、どうしても見てしまうところがあります。
- 素材と重さのバランス:軽い生地でも、織りが甘ければ長持ちしません。軽さと丈夫さは両立できます
- 縫製と製法:負荷のかかる部分がきちんと処理されているか
- ファスナー:毎日一番よく触る部品です。スライダー(つまみ)が持ちやすいか、滑りが素直か
カタログには「軽量」「丈夫」としか書かれませんが、実物は必ず、この3点に作り手の姿勢が出ます。
私の20L:毎日の通勤に
毎日背負っているのが Thule Crossover 2 Backpack の20Lです。先ほどの13点が、すべてそれぞれの場所に収まります。
ポケットは約15。数ではなく「サイズと位置」が良い
数えるとポケットは15ほどありますが、感心したのは数よりもそれぞれのサイズが実際の持ち物に合っていることです。ペンを挿す場所、定期券をしまう場所が、取り出しやすい位置に設計されています。改札の前で鞄を探る、ということがなくなりました。
ノートパソコンを守るパッド
パソコンを入れる部分は、しっかりしたクッションで守られています。混雑した電車で押されても、中身への安心感があります。
決め手は「入れても余裕がある」こと
私がこのリュックを気に入っている一番の理由は、実はここです。13点すべてを入れても、内部にある程度の空間が保たれます。だから手を入れて何かを出すとき、しまうときの動作が窮屈になりません。
容量表には出てこない部分ですが、毎日開け閉めする道具では、この差が一番大きいと感じています。
私の26L:荷物が多い日・1〜2泊の出張に
もう一つ使っているのが Thule EnRoute Backpack の26Lです。こちらは毎日ではなく、荷物が増える日の相棒です。
- 20Lに比べて衣類を入れる空間が広い
- 1〜2泊の出張にちょうどいいサイズ
- ポケットは約13。20Lより少し少ないものの、適材適所に収まる設計思想は同じ
キャリーオンベルトが効く場面
26Lにはキャリーオンベルトが付いています。スーツケースのハンドルに通して固定できるので、駅や空港での移動が明らかに楽です。旅行や出張のセカンドバッグとして考えられた作りだと分かります。
20Lと26L、どっちを選ぶ?
| 20L | 26L | |
|---|---|---|
| 主な用途 | 毎日の通勤 | 荷物が多い日・1〜2泊の出張 |
| ポケット | 約15 | 約13 |
| 衣類スペース | 作業着・タオル程度 | 着替えが入る広さ |
| キャリーオンベルト | — | あり |
| 向いている人 | 毎日の持ち物を整理して持ち歩きたい人 | 出張や1泊旅行も1つで済ませたい人 |
迷ったときの目安はこうです。「毎日の通勤がメインなら20L」「月に何度か泊まりがあるなら26L」。私は両方を持っていて、その日の荷物で選んでいます。1つに絞るなら、通勤の頻度で決めるのが失敗しません。
正直に:価格は高めです
ここは正直に、気になる点も書いておきます。
自立しません(特に26L)
まず一つ。床や椅子に置いたとき、自立してくれません。中身が少ないときは特に、置くと倒れます。容量が大きい26Lのほうが、その傾向は強く出ます。
柔らかい生地で軽さを出している以上、これは構造上仕方のない部分です。とはいえ、壁や椅子に立てかければ済む話なので、私自身はそこまで気にしていません。「置いたときにピシッと立ってほしい」という方は、頭に入れておくとよいと思います。
価格は高めです
そしてもう一つ。このリュックは、決して安くありません。
リュックにこの価格を出すのは高い、と感じる方は多いと思います。実際、もっと手頃なものでも荷物は運べます。私も以前はそう考えていました。
ただ、毎日使う道具は少し事情が違います。開け閉めのたびの小さなストレス、探しものをする数十秒、肩にかかる負担——これらは1日では気になりませんが、1年、2年と続くと確実に差になります。道具が手に合っていないと、それ自体がストレスの原因になる。鞄を作る現場で20年、道具を使い続けてきて実感していることです。
とはいえ、すべての人におすすめするわけではありません。次のような方は、無理に選ばなくていいと思います。
- 持ち物が少なく、ポケットの多さを持て余しそうな方
- 通勤時間が短く、鞄の開け閉めがそもそも少ない方
- まずは手頃な価格のもので使い勝手を試したい方
逆に、毎日パソコンを持ち歩く方・荷物の点数が多い方には、価格に見合う価値があると感じています。
よくある質問(FAQ)
Q. 通勤リュックの容量は何Lが正解ですか?
A. 持ち物の量によります。ノートパソコン+弁当+着替え程度なら20L前後が目安です。ただし同じ容量でもポケットの配置で使い勝手はまったく変わるので、数字だけで選ばないことをおすすめします。
Q. 20Lと26Lで迷っています。1つ買うならどちら?
A. 通勤が中心なら20L、月に数回でも泊まりの出張があるなら26Lです。毎日背負うものは、少し小さめの方が体への負担が軽くなります。
Q. 実際にお店で見るとき、どこを確認すればいいですか?
A. ①ファスナーを何度か開け閉めして滑りとつまみの持ちやすさを見る ②普段の荷物に近い量を入れさせてもらい、手を入れて出し入れしてみる ③背負って肩と背中への当たりを確かめる——この3つで、かなり分かります。
Q. リュックは何年くらい使えますか?
A. 使い方や頻度で大きく変わるので一概には言えません。ただし縫製やファスナーがしっかりした製品は、傷んだ部分が分かりやすく、手入れしながら長く使いやすい傾向があります。
まとめ|通勤リュックは「数字」より「毎日の動作」で選ぶ
- 容量よりもポケットの配置——持ち物に定位置を作れるか
- 満載でも手がすっと入る余裕があるか
- 素材・製法・ファスナーに作り手の姿勢が出る
- 毎日の通勤なら20L、泊まりがあるなら26L
- 価格は高め。それでも毎日開け閉めする道具なら意味がある
鞄は、毎日いちばん長く触れる道具のひとつです。数字のスペックだけでなく、自分の持ち物と動作に合っているかという目で選んでみてください。毎朝の気分が、少し変わります。
